告知事項あり物件とは?
公開日:2024/11/01
賃貸物件を探していると「告知事項あり」と記載されていることがあります。
実際に見たことがある人も多いのではないでしょうか。
これは貸主が借主(入居者)に対して、事前に告知しなければならない事項があるときに記載されます。
はじめに「告知事項あり物件」について説明し、次にメリット・デメリットや具体例などを紹介。
最後まで読めば、告知事項あり物件が自分に合うかどうか判断できますよ。
告知事項あり物件とは?
告知事項あり物件とは、借主に対して告知しなければならない瑕疵(かし)がある物件のことです。
瑕疵(かし)とは傷や欠点を指します。
告知事項の内容は、物件を契約するかどうかの判断に重要な影響を及ぼす可能性があるため、貸主は借主に対し事前に告知する義務があります。
告知事項の定義
告知事項にあたる瑕疵は主に4種類あります。
・心理的瑕疵
・環境的瑕疵
・物理的瑕疵
・法的瑕疵
心理的瑕疵
心理的瑕疵は、借主が心理的に大きなストレスを感じる事柄です。
明確な定義はありませんが、具体的には以下のような例が挙げられます。
・自殺
・他殺
・一定期間放置された孤独死
・忌まわしい事件
借主が嫌悪感、心理的に抵抗を感じる事柄はすべて該当すると考えていいでしょう。
一般的に「事故物件」と呼ばれています。
環境的瑕疵
建物の周辺環境によって借主がストレスを感じる事柄です。
人によって捉え方が異なりますが、以下のような施設が挙げられます。
・暴力団事務所
・宗教施設
・墓地・火葬場
・ゴミ処理施設・下水処理施設
・高圧線鉄塔
・ギャンブル施設
・風俗店
・ラブホテル
環境瑕疵は契約時に施設が存在している前提です。
しかし、上記のような施設が建てられる予定が明確な場合は、契約時に存在していなくても環境瑕疵に該当する可能性があります。
物理的瑕疵
物理的瑕疵は、土地や建物に問題があることです。
具体的には以下のような例が挙げられます。
・シロアリがでる
・雨漏り
・アスベストが使用されている
・建物が傾いている
・耐震強度の不足
・建物のヒビ割れ
上記のように物件そのものに物理的な不都合が生じているケースを指します。
床の傷やパッキンの欠損など、経年劣化による傷や汚れは該当しません。
法的瑕疵
法律(建築基準法、消防法、都市計画法)によって利用が制限される事柄です。
また法律に違反している物件も該当します。
具体的には以下のような例が挙げられます。
・建ぺい率・容積率がオーバーしている
・建物が安全基準を満たしていない
・再建築不可の物件
・防災設備が備わっていない
建築基準法が施行される以前に建てられた、築年数の古い物件でよく見られます。
現行の建築基準法に適している近年の物件であれば、法的瑕疵はない可能性が高いです。
なぜ「告知事項」があるのかを解説
貸主は部屋が先述した4つの瑕疵に該当する場合、借主に告知しなければなりません。
売買・賃貸を問わず、不動産取引において売主や貸主が物件の瑕疵を告知することは、宅地建物取引業法に基づく義務だからです。
参考資料:「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定しました 国土交通省
告知事項あり物件のメリット・デメリット
告知事項あり物件のメリット・デメリットを解説します。
ネガティブな印象を持たれがちですが、ポジティブな要素もあります。
良い面、悪い面をよく比較してから借りるのかどうか検討しましょう。
メリット
メリットは3つあります。
・賃料が相場より安い
・諸条件が良い
・リフォーム・リノベーション済みの可能性が高い
賃料が相場より安い
最大のメリットは賃料が相場より安いことです。
瑕疵の内容にもよりますが、借主の心理的ハードルが上がってしまうことが原因と考えられます。
たとえば自殺なら5割、病死なら1割ほど安くなるなど。
高額な物件になるほど大きな恩恵を受けられます。
諸条件が良い
告知あり物件は募集条件が良い可能性が高いでしょう。
貸主がすこしでも早く入居してほしいからです。
「礼金ゼロ」「フリーレント3ヶ月」「家具付き」など。
家賃やそのほかの条件について、交渉しやすいのもポイントです。
リフォーム済みの可能性
事件や事故の起きた部屋はリフォームされている可能性があります。
部屋の印象をすこしでも良くしたい、という貸主の意向からです。
また分譲マンションのオーナーによっては、リノベーション(配管含む内装すべてを改修)を実施することも。
割安でキレイなお部屋を探している方は、検討してみるのもいいでしょう。
デメリット
デメリットは2つです。
・精神的な負担が大きくなる可能性
・事故の内容・住所の特定
精神的な負担が大きくなる可能性
瑕疵の内容を理解したうえで入居したものの、日を追うごとにストレスが増大してしまうことも考えられます。
たとえば平日も盛り上がっている競馬場から近い物件。
入居時は会社へ通勤していたため、日中の騒音も気になりませんでしたが、リモートワークを命じられた日はうるさくて仕事に支障をきたすでしょう。
このような状況が続くと、ストレスから結果的に部屋に住み続けられなくなる可能性があるのです。
事故の内容・住所の特定
告知事項の事件や事故が有名な場合、物件の住所が特定されている可能性があります。
すると、一目見ようと物件を訪れる人も出てくるでしょう。
さらに興味本位で見物に訪れる人だけでなく、宗教の勧誘や訪問営業がくる確率も高いです。
このような煩わしさがストレスになり、引越しを余儀なくされる可能性があります。
告知されるべき事項の具体例と内容
告知事項は主に4種類あります。
・心理的瑕疵
・環境的瑕疵
・物理的瑕疵
・法的瑕疵
告知事項の定義は前述したとおりですが、理解を深めるために、こちらでは具体例を交えながら解説します。
具体例
心理的瑕疵の例
心理的瑕疵は借主が不動産取引の際、心理的に抵抗を感じる事象のことです。
・部屋で自殺や他殺、銃器発砲など重大事件があった
・建物で飛び降り自殺があった(部屋でなくても心理的瑕疵に該当します)
・孤独死があり、発見までに時間がかかった
・近隣に刑務所や原子力発電所がある
・近隣住民の迷惑行為がある
環境的瑕疵の例
環境的瑕疵は建物周辺の環境によって、生活に悪影響を及ぼす可能性がある事象のことです。
・騒音のする工場が至近にある
・消防署に隣接しているため、24時間サイレン音が聞こえる
・線路に面しており一日中、騒音に悩まされる
・下水処理施設が近隣にあるため、いつも異臭がしている
・近くに風俗店があり、夜は治安がよろしくない
物理的瑕疵の例
物理的瑕疵は、建物自体に重大な欠陥があったことを指します。
・大した雨でもないのに雨漏りがひどい
・壁にヒビが入っているのに、貸主がクロスで隠していた
・シャワーの水圧が弱いと思っていたら、実は配管が破損していた
・耐震基準を満たしていない建物だった
・実は入居前からシロアリが発生しており、建物の強度が低下していた
法的瑕疵の例
法的瑕疵は「建築基準法」「消防法」「都市計画法」に違反している状態によって生じる事象です。
・建築基準法を違反しており、建ぺい率や容積率をオーバーしている
・部屋に火災警報器やスプリンクラーが設置されていない
・原則として建物を建築してはいけない、市街化調整区域内に建っている物件
・道路幅員が4メートル未満の場所に建築された、再建築不可の物件
告知事項あり物件を選ぶ際のポイント
告知事項あり物件を選ぶ際のポイントは3つあります。
・心理的瑕疵が告知されないときがある
・告知事項が許容範囲かどうか
・新築物件でも瑕疵に該当するケースがある
心理的瑕疵が告知されないときがある
お部屋で事件や事故があった場合でも、借主にかならず告知されるわけではありません。
というのも、「事件や事故の発生から◯年間の告知義務がある」と定められていないからです。
そのため、有名な事件や事故のあった物件であったとしても、数年経つと告知されなくなる可能性も。
さらに、事件や事故の発生から2人目の入居者に対しては、告知する義務もなくなるため、伏せたまま入居募集するケースがあります。
告知事項が許容範囲かどうか
入居する前は「これくらいなら大丈夫」と思っていても、住み続けているうちに精神的な負担が増加するかもしれません。
入居してから日も浅いうちに引っ越すとなると、お金や時間の無駄になります。
そうならないために、物件についてよく検討することです。
たとえば、「昼だけでなく夜も内見する」「週末だけでなく平日の環境をチェックする」など。
内見1回で判断するのではなく、複数回見ることをおすすめします。
新築物件でも瑕疵に該当するケースがある
告知事項あり物件の多くは築年数の経った物件ですが、新築物件にも存在します。
たとえば以下のようなケースです。
・マンションの建築中に作業員が亡くなった
・入居後、近くに宗教施設が建設された
・手抜き工事されていて耐震基準を満たしていない
確率は低いですが、新築だからといって告知事項がまったくないとは言い切れません。
告知事項の重要性やチェックポイントなど
賃貸物件の取引に関する告知事項は、「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」にて策定されています。
宅地建物取引業法に基づいており、告知義務を怠った不動産会社は借主から損害賠償を請求される可能性があるのです。
ウェブサイトや募集図面に「告知事項あり」と記載されているにも関わらず、契約時に告知事項の内容を説明されなかったときは然るべき対応をしましょう。
告知事項あり物件に関するトラブルと対策
告知事項あり物件に関するトラブルと対策について見ていきましょう。
どのようなトラブルがあるのか事前に把握しておけば、心にゆとりを持って契約に臨むことができます。
トラブル例
入居者募集の図面に「告知事項あり」と記載されていたが、賃貸契約の際、とくに説明はありませんでした。
このようなときは、まず契約した不動産会社に質問してください。
万が一、不動産会社が告知事項の詳細を知らなければ、物件の所有者に確認してもらいましょう。
いつまで経っても詳細がわからない場合や、はぐらかされてしまうときは、市区町村の相談窓口で法律相談するといいですよ。
然るべき対処方法を教えてくれます。
お住まいの地域によって相談窓口の名称、受付日時も異なるため、あらかじめ確認しておくと安心です。
まとめ
今回は、告知事項あり物件の概要やメリット・デメリットについて解説しました。
おさらいすると、告知事項あり物件は具体的に以下4つのいずれかに該当します。
・心理的瑕疵
・環境的瑕疵
・物理的瑕疵
・法的瑕疵
家賃が相場より安い、諸条件が良いといったメリットもある一方、入居してから精神的負担が大きくなる可能性などデメリットもあります。
告知事項あり物件への入居を検討するときは、家賃の安さだけにフォーカスするのではなく、瑕疵の内容も精査し総合的に考えて判断しましょう。